「八十日間世界一周」のトランプゲーム

先日来、外出時に持ち歩いていたジュール・ヴェルヌ作「八十日間世界一周」を読み終えました。ひと月ほど前に北千住の書店で目に入り、買い求めた466ページ1,008円の文庫本です。この英国の小説は半世紀近く前、高2の時に英語のリーダーの授業で一年間教材として使われ、(英語の苦手な自分としては)一度日本語訳で全編を読んでみたいと心の奥で想い続けていた作品でした。

英国で初掲載されたのが1872年つき、遡ること140年前(明治4年)の作品になります。フォックスなる人物がロンドンの革新クラブにて、80日間で世界一周が出来るか否かに、仲間と二万ポンドの賭けをしたことから物語が始まります。話のトリックが何なのかは、読む前から分かってしまう感はありますが、蒸気列車と蒸気船を乗り継ぎ、多難を乗越えて行くサスペンスは、19世紀の世界を顧みる楽しさもあり、併せて徐々に成熟して行く愛情をサンドイッチに重ね、期待した通りとても面白い冒険小説です。

作者がこの小説を書くに際し参考にした資料が、1860年に発行された雑誌「世界一周」の記事と言いますから・・日本では安政7年、桜田門外で大老井伊直弼が暗殺された年。物語では横浜にも立ち寄り、召使のパスパルトゥーが曲芸師の仲間になる件があったりします。幕末の横浜は開港し貿易の街として賑わっていたと言いますから、話の筋としては間違いではないものの、街の描写には若干違和感を覚えます。しかし作者は日本に来たことがないので、これは仕方がないことでしょう。

自分として興味を覚えたのは、インドのヒンズー教の古い因習が残る村で、夫の老国王の死に対して殉死を強要された若いアウダ夫人を奪回する話や、アメリカ横断中のユタで、一夫多妻制を維持するモルモン教への弾圧と布教活動の話などでした。そして、もう一つ興味を引いたのは、主人公のフォックスが列車や船の中で同乗者と興じるトランプゲームのホイストです。ホイストはブリッジの原型だそうですが、当時の英国ではトランプゲームが紳士・淑女の中に定着していたことを示しています。

また、物語ではアメリカ中西部のシカゴを経由します。シカゴと言えば、カードマジックの原典S.W. Erdnase著「The Expert at The Card Table」が出版された地であり、それは1902年の事。この小説の創作から40年後になります。カードマジックは、賭けゲームのイカサマ技から生まれたのは確かな事実で、トランプゲームの大衆化がカードマジックの発展に寄与しているのも間違いありません。現代の日本において、紙のトランプを使ってゲームを楽しむ姿はどの程度なのかと考えていたら~荒れた大波が目前に~
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by ishiken55 | 2013-06-21 14:43 | 文芸 エッセイ | Trackback | Comments(0)
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