2月始めにKさんからお借りした
『マスターズ カード テーブル』を返却する前日に、もう二度と手にすることは無いと思い、再度中身を捲ってみた。著者は伊藤正博氏、私と同世代の方で、学生時代にここまで大冊の書をまとめ上げた事に驚愕し、畏敬の念を抱かずにはおられなかった。中身は日本で出版された奇術図書や奇術雑誌に掲載されたカード奇術作品を集めたもので、洋書を直接翻訳した作品、ご自分のアイディアも所々に組み込まれている。そして文面が手書きであることも、その手間を思うと驚きである。
現在は著作権等が厳格に扱われるようになったので、個人用としての作成は自由であっても、半世紀前のこのような書籍を当世に出版する事は許されないだろうが…。この書籍の発行は昭和45年(1970年)9月15日。『はしがき』には、高木重朗氏、加藤英夫氏、濱谷堅蔵氏に、執筆にあたっての謝意が記されている。高木氏は26年前に他界されたが、加藤氏と濱谷氏は今も奇術に関わっておられる。カードマニュプレーションの演技者としても非凡であった伊藤正博氏、現在マジックに携わっておられないそうで残念に思う。
※ 因みに「マスターズ カード テーブル」は350作品728ページ。
最初の作品は氣賀康夫氏「頭の働らき」~最後の350作品は「ニコラシステム」
《「武蔵工大マジックサークル」の創設者₋濱谷堅蔵氏からコメントを頂く》「マスターズ カードテーブルの初版は、上下2巻セットの限定版(茶色のハードカバー)で、武蔵工大マジックサークルの部員や友人たちに実費で配布した。ジアゾ式の湿式コピー機を使って1ページずつコピーしたものを製本屋に持ち込み、製本してもらった大変貴重なもの。その後、加藤英夫さんが主宰する「カトーマジックスタジオ」で1巻にまとめ(黒色のハードカバー)、限定出版の形でマニアの方を対象に販売された。(濱谷氏からの貴重な写真を転用)