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グリム童話の“魔術師”

グリム童話の“魔術師”_c0049409_2030172.gif「赤ずきん」や「白雪姫」で知られるグリム童話に、“魔術師”が登場する作品があることをご存知でしょうか。作品の名を 『天井の梁』 と言います。この作品がドイツで発表されたのは19世紀の中頃、今から150年以上前のことになります。
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昔々ある所に一人の魔術師がおりました。魔術師は大勢の人前に立ち、次々と不思議なワザをやって見せました。魔術師は一羽の雄鶏(おんどり)を連れていました。その雄鶏は天井の梁にする重い材木を持ち上げて、まるで鳥の羽のように軽々と担いで行きました。

そこに一人の娘が居合わせました。娘は四つ葉のクローバーを見つけた事があり、そのおかげで、とても賢くなっていました。どんなまやかしもこの娘の目をごまかすことはできません。娘は雄鶏が担いでいる材木が天井の梁ではなく、麦藁にすぎないことを見破りました。

娘は前に進み出て・・・叫びました。「ねえ、みんな。 雄鶏が担いでいるのは天井の梁なんかじゃなくて、ただの麦藁よ。わからないの!」
すると、魔術はたちまち消えました。人々は騙された事が判り、魔術師を罵り追い払いました。魔術師は怒りに震えながら心の中で呟きました。(いつかきっと仕返しをしてやるぞ!)

暫くして、娘が結婚式を挙げることになりました。きれいに着飾って、参列の人々と長い行列をつくり、野原を越えて教会へ向って行きました。
突然、ひどく水嵩の増した小川に行き当たりました。そこには、橋も架かっていませんし、丸木橋さえありません。そこで、花嫁は素早くドレスをたくし上げ、川を渡り始めました。

花嫁が川を渡っていると、一人の男が近寄って来て、嘲るように言いました。
「おや?おまえ、一体何処に目を着けているんだい。これを水だと思うなんて!」
そう言われて、娘はハッと我に返りました。見ると、青々と茂った麻畑の真っ只中、ドレスをたくし上げて渡っているのでした。
すると、人々も皆これを見て大笑いし、娘を罵って追い返してしまいました。
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小峰書店の「グリム童話」を底本にさせて頂き、大人向けの表現に書換えました。

『柔い麦藁が天井の梁に見える筈はない!』などと大人の常識を持ち出してはいけません。また、教訓めいた事に囚われる必要もありません。童話は~人それぞれ、捉えたイメージを心で楽しめば良いのだと思います。・・・でもこの童話、何を伝えようとしたのだろう?

ps
先週の水曜日(12月12日)、TAMC(東京アマチュア・マジシャンズ・クラブ)の第15代会長を務められた持永恒美氏が逝去されました。翌13日のお通夜に私も参列させて戴き、最後のお別れをしました。長年に渡りマジックをこよなく愛した持永さんは、『童話マジック』の上演に情熱を注がれた人でした。享年78歳、ご冥福をお祈り致します。
by ishiken55 | 2007-12-18 21:25 | 文芸 エッセイ | Trackback | Comments(0)
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